2013年8月28日水曜日

ユグドラシル



暑くて暑くて仕方がなかった夏も、このところ少し涼しくなり夏の終わりを感じますね。
夏の終わりといえば、甘酸っぱい切なさを残すものですが、
僕は大好きな秋の到来が感じられて、なんだかわくわくしています。

それもそのはず、本日から秋冬の新作フェアがスタートいたします!




















秋冬のコレクションテーマは「YGGDRASILL」

ユグドラシルという言葉、あまり聞き慣れない響きですが、北欧神話に登場する一本の樹の名前なんです。
日本語では世界樹または宇宙樹と言い、その名の通り宇宙そのもの。九つの世界を宿した巨大な樹です。

その世界樹の中で繰り広げられる様々な神話の物語をベースに、オーロラ、霜、星空など北欧の冬の風景と重ね合わせてイメージを膨らませました。

テーマが決まったとき、ユグドラシルが一体何を指すものなのか分からず、神話と聞いただけで難しそうという印象だったのですが、
小島と森下から世界樹にまつわるエピソードと、何故そのテーマを選んだのかを聞いているうちに、なんだか面白そうと、次第に興味が湧いて来ました。

世界樹をきっかけに、北欧神話のことを調べていくと意外にもわかりやすく、難しいという意識は消え、どんどんその世界に引き込まれていくのを感じました。

例えば、
やがて死が訪れる事を知っている神さまたちが、永遠の命を得るために黄金の林檎を探し求めたり。
ある神さまは知恵を得るために代償として自らの片目を差し出したり、
不死身の神様を傷つけた、罪のないヤドリギを平和の象徴としたり。

北欧神話の全てを知ろうとすると膨大で大変ですが、一つ一つのエピソードを少しずつ読むだけでもとても面白いです。


その中でも特に好きなのが
オーディンという偉い神様に仕える、ヴァルキュリアと呼ばれる女性たちが夜空を舞うとき、身にまとった鎧からこぼれた光がオーロラをつくりだす。
という物語。

この世のものとは思えない、美しいオーロラの光が一体どこからくるのか、昔の人は色々と想像を膨らませてこのエピソードが生まれたのかなと思います。

北欧神話の中には暗い物語も多いのですが、このお話はなんだかロマンがあって素敵だなぁと思い、
空を翔るヴァルキュリアのように、オーロラの光を身にまとえるようなビジューをつくりたいなと思いました。



















オーロラの光のカーテンがたなびく様子を、グリーンクォーツのオリジナルカットで表現しました。
このグリーンクォーツという石は、その名の通り緑色の水晶ということなのですが、色味がなんともやわらかく絶妙で、オーロラのイメージにぴったり、神秘的です。

このオーロラカットの石の下に見える透かしは、霜が華のように広がる様子と、空から針葉樹林を見下ろした風景。
身につけた時に、そんな景色が広がるビジューになればいいなと思いデザインしました。


その他にも世界樹の根っこをかじる蛇、人々の運命を決めてしまう三姉妹の女神、北欧神話が記された石碑など。

世界樹というとても深いテーマから感じた思いをどうやってかたちにすればいいのか、悩み、楽しみながらひとつひとつかたちにしていきました。


9/7(土)、9/8(日)の二日間は新宿伊勢丹デザイナー来店のイベント、
9/14(土)9/15(日)9/16(月)の三日間は神戸のイベントで、
それぞれに込めた北欧神話の濃~い物語をお話したいと思います!
またそれ以外の日でも、店頭スタッフが熱くご説明いたしますので
皆さま、ぜひぜひご来店お待ちしております!

2013年8月21日水曜日

ぼくのなつやすみ*思い出の山


幼い頃、毎年夏になると近くの山へ昆虫採集に行っていました。
夏休みは毎日早起きをして、外がほんのり明るくなったくらいが出発時刻。

ドキドキしながらお墓の隣を通って、目当ての木を目指す。
今日はどんな大物と出会えるだろう、頭はそのことでいっぱいで怖さも忘れていました。

子どもたちの中でカブトムシとクワガタムシといえば花形の人気昆虫。
僕は専らクワガタ派で、特にヒラタクワガタが大好きでした。

カブトムシ、クワガタ採りは、彼らが集まる樹液の出ている木を探す事から始まります。
ひたすらに山の中を歩き回って、虫たちが集まっている木を覚えては、ルートを作って毎日繰り返し行っていました。
その繰り返しの中で、昆虫の活動時間や木の種類、どの部分に集まりやすいかなどを少しずつ覚えていきました。

中学生以降は山に行く機会も少なくなり、
大学でジュエリーの制作するようになってから、再びモチーフ探しのために訪れるようになりました。
年々、山の様子が変わっていくので、
ここ数年は昆虫採集よりもその環境の変化を確かめる目的が大きくなっていました。
昨年の夏に一度訪れた時は、以前とは随分様子が違っていたので、今年はどうだろうという思いでまた山を登りました。

小学生の頃によくチェックしていたお気に入りの木は、
誰かが樹皮の隙間に隠れるクワガタなどを採るためにしたのか、樹皮が大きく剥がされており、樹液もほとんど出ていないようでした。
この木にはもう長い間昆虫が付いていませんが、わずかな期待を胸に毎年見に来てしまいます。

次の木へ向かって歩いていると、どこからか「カチカチ、カチカチ」と言う音が。
不気味に思いつつ振り返ると、そこには一本のクヌギの木があり、根元をぐるりと囲むように密集した30匹近い数のカブトムシの大群がいました。

カチカチという音は、根元から出ているわずかな樹液をカブトムシたちが取り合っている、戦いの音だったのです。
















以前は一匹見つけただけで心が躍ったカブトムシ。
立派な雄を見つけたときは、それは胸が弾んだものでした。
昨年もカブトムシが沢山いて驚いたのですが、今年は更に数が増え、他の昆虫を寄せ付けない異様な光景でした。

カブトムシは、樹液に集まる昆虫の中での力関係で優位なので、他の昆虫が近寄れず、
時間帯を変えたり違う木にはもっと他の昆虫もいるのかなと思いつつも、衝撃的な光景を前にしばらく立ち尽くしていました。

山を歩いていて気が付いた事がありました。
至る所に置いてある、沢山の切り倒された木。
カブトムシの大量発生の原因は、これなのではないかと思いました。

カブトムシの数が増えたのではなく、山から樹液の出る木が少なくなったために、山全体のカブトムシが数本に集中してきているのかも知れません。














数年前に来た時に死骸を見つけたのを最後に、今年もクワガタの生息は確認出来ませんでした。
今年は死骸すらカブトムシのものばかりだったのです。

思い出の山。
木がなぜこんなに切り倒されているのか、調べつつ
今後も見守っていきたいと思います。


2013年8月7日水曜日

水の女神



ジィオデシック春夏コレクションのテーマは
「ブルーナイル、レッドサバンナ」です。


古代エジプトでは、睡蓮を「太陽の花」「水の女神」としてとても大切にし、壁画などに刻んでいました。
睡蓮の花は朝になると開き、夜の間は眠るように閉じていることから、太陽と結びつけられたそうです。
そのことにとても魅力を感じ、「ナイルの花嫁」と呼ばれた睡蓮をコレクションメインのモチーフに選びました。

















身に着けたときに睡蓮の花がぱっと開くような、あたたかく可愛らしいもの。
それが最初のデザインイメージでした。

睡蓮の、やわらかくみずみずしいフォルムを表現するためのオリジナルカットの水晶。
三つの丸がくっついたような形は、水面に浮かび重なり合う睡蓮の葉っぱの様子。
丸の中央に走る三本の稜線でナイル川の流れを表現しました。
石座は透かしで軽やかに。
石を通してK18の透かし文様が見えます。
腕は水面下でうねる茎や水の流れをイメージして自由なラインに、ポイントで浮かぶ睡蓮の葉はK18で。

完成したこのデザインはブルーナイルコレクションを象徴するものとして、ナイル川の合流地点の都市名から「ハルツーム」という名前になりました。

僕の実家には小さな池があり、そこで睡蓮を育てているのですが、先日葉っぱの隙間から可愛いふたご睡蓮が顔を出していて、思わず写真を撮りました。

池の中央スペースは空いているのに、なぜかいつも端っこに咲きます。

花はもちろんですが、葉っぱの微妙なうねりや、いびつな穴、つるつるとした質感など、自然のものは本当に美しくて眺めていて飽きません。


このふたご睡蓮のように、予想もしなかったことがある日突然起きるのも、自然ならではの面白さです。

日々の小さな感動をあつめて、かたちにしていけるといいなぁと思います。