2013年7月23日火曜日

コノハムシ


コノハムシという昆虫を初めて知ったのは、小学生の頃、
昆虫図鑑の最後に載っていた「へんな虫特集」でした。


大学在学中、ハチ、クワガタ、チョウと、昆虫をモチーフにジュエリーを制作し、卒業制作ではそれらの集大成になるようなものを作りたいと考えていました。
モチーフ探しの末行き着いた、昆虫標本を販売している海外のウェブサイトで、日本にはいない色とりどりで珍妙な昆虫の写真の中にコノハムシを見つけ、「これだ!」と感じました。
次第にその魅力にとりつかれ、3回生の夏にはブリーダーの方から生体を分けてもらうことが出来、飼育しながら観察することにしました。


コノハムシはタイやマレーシアに生息する、その名の通り葉っぱそっくりな昆虫で、葉っぱを食べ、葉っぱに擬態することで外敵から身を守り生活します。
その動きはとてもゆっくり。普段はじっとしていて、時折風が吹くと周りの葉っぱに合わせて自分の体を揺らします。
頑張って葉っぱになりきっている様子がとても可愛らしい昆虫です。

メスの翅は退化していて、飛ぶ為ではなくより葉っぱらしく見せる役割をしていて、体の微妙な輪郭は、コノハムシが齧った「虫食い葉っぱ」そっくりの形をしています。
観察をしていくと、一見でたらめな形や動きのひとつひとつに意味があり、それらすべてが生きる為の工夫だということが分かり、とても面白く、愛おしく思えました。

卵から生まれて、脱皮を繰り返し成長していく姿を日々観察し、
卒業制作では、大学で勉強してきたジュエリーの技法を用い、観察記録として生きたままのコノハムシの生態を表現することに決めました。




葉っぱの色に合わせて変わる、オレンジ、黄、緑と様々な体色の変化を金属の種類、仕上げの違いで表現したシリーズ。孵化、食事、産卵、コノハムシの生きた姿を食樹のグァバごと金属で制作した大物2点。8体の実物大コノハムシ。ディスプレイにはオリジナルで制作したアクリルケースと、大学とも縁の深い北山杉の丸太を使用しました。


大好きなものを精一杯つくる。
そう思ってつくった卒業制作は、とても自分らしく、思い出深いものとなりました。
コノハムシの食樹であるグァバの木の入手が難しく、現在は飼っていませんが、いつかもう一度環境を整えて
またじっくりコノハムシ観察したいなぁと思います。
コノハムシのオブジェ数体を、8月3日からの小島森下ゼミ×Geodesique「不思議な森に突如現れる空集合なモノたち」展に出品します。
ぜひ見にいらしてください。